ホーム・カミング/ホロウ・シカエルボク
だけは確かだった、でももうもしかしたら死の直前まで思い出すことはないかもしれない、そう思うと残念な気がした、もう眠る気にはならなかった、思い出せないならそれでいい、それは脳味噌の中にないだけだ、身体のどこかでその記憶はビタミン剤のように全身にその感触を循環させているだろう、血管を引っ張り出してどこかで切断すれば血液と一緒に細かいディティールも吹き出すかもしれない、って、それじゃ結局死の直前じゃないか、俺は一晩かけて歩いてきた道を逆に辿り始める、時々まるで違うルートを選んで家に帰りつくときもあるけれど、今日はそのまま逆に辿ろうと思った、特別口にするような理由も無い、しいて言うなら気分に従うのが一番い
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