繭/由比良 倖
 

君と最後の光を見たい。
息を止めて、呼吸を何処までも潜って、
静かに外に、人生が切り売りされているのを、
遠くから眺めて。


ガラスのスプーンで君に、私の思い出を飲ませたい。
言葉を組み立てては、怪獣みたいに、
破綻の後に新しい廃墟を建てたい。

道路を斜めに横切るのが好きでした。
斜め好きが高じて世界を知りました。
崩壊した記憶みたいな遊園地で、
言葉を食べるままごとを数十年続けて。

もう解錠してもいい部屋たち、
頭の中の数十万のドア、
血を流した白い床、
一秒間だけ消えては、光る星が置かれているはずです。


悲しい雪解け水をバスが走って
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