文学が救うべきものは、命ではなく物語である/鏡文志
全く別の側面を見ている父親がいて、その父親は、この事実を喋ると部屋に盗聴器が仕掛けられていて、それが権力者に聞かれてしまうかも知れないから黙れと、息子に言う。
部屋に盗聴器が仕掛けられていることがあり得ないわけではない。しかしそれだったら全ての家庭に盗聴器が仕掛けられていても不思議ではない。それにネットの時代は全ての情報が個人個人でダダ漏れとも言える。
この父親が推進する神経質な生き方は不健康なのではないか? と男は内心疑っている。
そして驚くことにこの父親は、自分の政治的主張だけは決して捻じ曲げることなく、家庭内で余すことなく話し続ける。
男が気づいたのは、この父親がよく分か
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