空はどこまでも白く/由比良 倖
思うし、その言葉があなたに与える、心の中の掴めない化学反応のような苛立ちも、分かると思う。
私は、三十年間、喋らなかった、だって言葉を知らなかったのだから、何も見えないし、私は死も夜も言語も知らない。だから、私は私の願望を知らなかった。知り得なかったんだ。
空を厳密に規定するならば、つまりどこからどこまでが空なのか、決めるならば、地の底に至るまで、全て空なのだ。でも、鳥かごの中でもそれでも空と言える? 空に手触りはない。汚れた雨も空であるとするなら、私が「煙草の煙は一番自由で、とても美しい空だ」と言ってはいけない理由がある?
私は言う。私の住む世界は言葉の空で満ちている。「誰にとっても
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