空はどこまでも白く/由比良 倖
ても美しい空なんてない」空とはただの満ち足りた白紙なんだから。書かれる前の言葉と同じ。本当はこの先は誰も生きられるはずのない、白紙の宇宙なんだ。それ故に人は言葉に縋り、言葉を耕していく。
私のラッキーストライク。私のライター。私は私の奥へ流れ去っていき、そして指先から現実へと這い上がってくる。私の透明な色をディスプレイに浮かばせる、私のコンピューター、あるいは、私のペン。
睡眠薬をさくさく噛みながら、ディスプレイに向かって、膝を抱えている。理由も無く生きれば、理由も無く死ねる。白紙の空に溶けていく。空との静かな会話の中で此岸と彼岸の境目が薄れていく。空に満たされ、私は消えて行く。
さよなら、はきっと、誰にも言わない
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