空はどこまでも白く/由比良 倖
婆さんが言った。私は、にっこり笑って、ありがとう、と言った。
私の声は、最近綺麗になっている。まるで死者や悲しみが私の声の中の嫌なしがらみだけを取り払って、空の奥へと上らせてしまったみたいに。それは、この空の青さと矛盾しない。
私は祖父(私を、本当によく可愛がってくれた)に一番近いと言っていいくらいの遺族なのだけれど、終始一番離れた場所で、仕方なしに列席した遠い親戚の誰かみたいな顔で、薬を噛んでいた。憂鬱だった。ただただ憂鬱だった。父も、母も、それをとがめなかった。私は、入院を勧められているときだった。その頃、私は不真面目に、しかし割と本気で、死のうか、と、入水なんて案外出来るかもしれない
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