まっさらな直線、「凧の思想」 ──大岡 信のこの一篇/田中宏輔
 

 大岡 信先生のもっとも印象的な思い出は、ぼくの目をまっすぐにお見つめになられたその大きなお瞳です。その先生とはじめてお目にかかったときに、つぎのような言葉のやりとりがありました。先生が、「きみが使っている言葉はやさしいけれど、書いている詩はむずかしい。」とおっしゃったので、「そうなのですか。」と、お返事したあと、お訊きしたいことを一刻もはやくお訊きしたいというはやる気持ちから、「でも、どうして、なんの縁もゆかりもないぼくのことを選んでくださったのですか。」と、すかさずお尋ねしますと、「そろそろ天才が現われるころだと思っていたのですよ。」と、ぼくの目をまっすぐにごらんになられながら、そうおっし
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