まっさらな直線、「凧の思想」 ──大岡 信のこの一篇/田中宏輔
 
っしゃったのでした。これは、ぼくが、大岡 信先生に、一九九一年の一月号の誌上で、ユリイカの新人に選んでいただいたときの年のことで、たしか、その年の二月か、三月のことであったと思います。先生はさる文学賞の選考会のあとでお寄りになられたとおっしゃっておられたのですが、新宿の駅ビルにある PETIT MONDE という喫茶店で、ぼくが先生にはじめてお会いしたときのことでした。さて、いま、大岡 信先生の作品のなかから一篇を採り上げさせていただくといたしますと、これもまた、まっすぐに見つめられるお瞳ですね。ピンと張られたまっさらな直線です。「凧の思想」を上げます。


凧の思想        


[次のページ]
戻る   Point(12)