古井由吉『招魂としての表現』讀後/?任勇梓 Takatoh Yuji
 
あ常套句つぽいから
苦蟲の人
と云ひ直してもいゝ
心の何処かで、苦蟲を?み潰してゐる人
の意で
私は彼を「規定」する

躊躇、振り返り、意識的な意識の牛歩戦術のごつた煮の煮込み方を
氏は獨文學の學徒であつた頃
ロベルト・ムージルから?み獲つた
ムージルなんて難解過ぎて 他の教授連オエライセンセイガタには分からなかつたのだ
そんな存在を日本文學の俎板に載せたのが
古井氏の初期の作品だつたと思ふ
だから氏は一人の「泰斗」つまり一人の月給取りの職を辞し
小説家と云ふやくざな稼業に
一歩(偉大な一歩だ!)踏み出しす事が出來たのだらう

靈感と云ふものがある散文家だつた
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