THE GATES OF DELIRIUM。 ──万の川より一つの川へ、一つの川より万の川へと/田中宏輔
 
。言葉は、わたしの自我を吸って、わたしの精神にぴったりと貼りつく。わたしはそれを指先でこねくり回す。油じみた黒いしみ。遠足の日に履いて行った、まっさらの白い運動靴が、わざと踏まれて汚された。いくら洗っても、汚れは落ちなかった。ページをめくると、パチクリ、パチクリ、ウィンクされた。川と川面に映った風景が入れ換わる。そういえば、アドルフ・ヒトラーも、わたしのように、夕闇に浮かび漂う蛍の尻の光に目をとめたことがなかったであろうか? 「まもなくイエスが現われる頃だ。」(ジョン・ヴァーリイ『へびつかい座ホットライン』16、浅倉久志訳)「これから何をするかは、わかっている。」(ウォルター・テヴィス『運がない』
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