人格と世界観5・ゲーテの世界観と神秘主義（上）/ひだかたけし
ゲーテの世界観から受け取る根本的な気分は、
神秘家の場合に観察できる気分に似ている。
神秘主義は人間の魂の中に事物の根源でもある神性を見出そうとする。
神秘家もゲーテも、内的体験の中に世界の本質が開示されると確信している。
ただ、ある種の神秘家は、理念界に沈潜しようとは望んでいない。
それが目指す内的体験であるとは思っていないのである。
そういう一面的な神秘家は、理性の明確な理念について、
ほぼカントと同じ立場に立って、理念は自然の創造性とは直接の関係を持たず、
もっぱら人間悟性に属している主観的なものだと思っている。
したがってこういう神秘家は、例えば脱魂（エクスタシー）のよ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)