人格と世界観5・ゲーテの世界観と神秘主義(上)/ひだかたけし
 
のような、
特殊な状態を生じさせることによって最高の認識、高次の直観を得ようとする。
みずからの感覚的な観察力や理性的な思考力を殺して、感情生活を高めようとする。
そうすれば、自分の精神性の中に神性を直接感じとることができると思っている。
そうできた瞬間には、
神が自分の中に生きている、と信じられるというのである。
 ゲーテの世界観の立場に立とうとする者も、
同じような感情を呼び起こすことができる。
けれどもゲーテの世界観の場合には、
観察と思考を殺したあとの体験から認識を汲み上げるのではなく、
まさにこの観察と思考から、そうするのである。
ゲーテの世界観は、人間精神生活の異常状態に逃れるのではなく、
通常の素朴な精神的態度でも十分にこういう認識を完成させることができ、
自然の創造行為を自分の中に体験することができる、という立場に立っている。
「私の考えでは、最後に残るのは、通常の理解力があえて高次の領界で学ぼうとして、
実践的に、自己に厳しく作業することだけである」(ゲーテ「経験と科学」)。


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