WELCOME TO THE WASTELESS LAND。──詩法と実作/田中宏輔
った言葉が自我に作用し、自我がメモにある言葉を結びつかせるほど活発に働いたのかもしれない。ヴァレリーの『刻々』に、「善は或る見方にとってしか悪の反対ではなく、──別の見方は二つを繋ぎ合わせる。」(佐藤正彰訳)という言葉がある。たしかに、「繋ぎ合わせる」のは自我であるが、かといって、「別の見方」ができるのは、精神のなかに「別の見方」を可能ならしめる概念があってこそのことかもしれない、とも思われるのである。どちらが原因となっているのか、それはわからない。メモにある言葉や、そのメモを眺めているときの状況に刺激されて、自我が活発に働いて、メモにある言葉と言葉を結びつけていったとも考えられるし、放置されてい
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