WELCOME TO THE WASTELESS LAND。──詩法と実作/田中宏輔
 
もたらされた情報であったかもしれないし、その情報が、精神のなかに保存されていた概念と結びついたものであったかもしれないが、少なくとも想起された概念を形成する何ものかであったかとは思われる。キルケゴールの『不安の概念』第二章にある、「人の目が大口を開いている深淵をのぞき込むようなことがあると、彼は目まいをおぼえる。ところでその原因はどこにあるかといえば、それは彼の目にあるともいえるし、深淵にあるともいえる。」(田淵義三郎訳)といった言葉に即して考えると、放置されている間に、メモとメモの間隙を埋める新しい概念が形成されて、それがメモにある言葉を自我に結びつかせたのかもしれないし、たまたま、メモにあった
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