俗・西遊記/栗栖真理亜
 
西へ西へと足を向けた。
そうそう、旅の途中でどんなことがあったのか、話さねばなるまいな。
私の長旅は実に快適そのものだった。
足が疲れれば、侍従たちが肩や足をも揉み解してくれ、夜の帳が下りる頃には自ら寝床となって私を癒してくれた。
そう、あの猿めに会うまでは。
あの猿めに会ったのは、旅に出かけてから3日目のことだった。
そびえる岩山に足止めを喰らい、呆然と立ち尽くしていると、侍従の一人が言った。
「わたくしが先にこの岩山によじ登って、この裏側の様子を伺ってみましょう」
言うが早いか、その侍従はもう岩にかじりついて登り始めた。
そして彼が岩山の頂上に辿り着こうとしたその時、突如とし
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