俗・西遊記/栗栖真理亜
 
再び私を抱きしめ、可愛がってくださった。
私が特別の間を辞して王宮の中庭へ出たとき、3人の侍従が鞍に大きな荷物を載せた馬の手綱を引きながら近付いて来た。
侍従は揃ってひざを折り、私に敬意を表しながら、こう言った。
「王様の命令により、旅に必要なものはすべて揃っております。私ども従僕もあなた様の為でしたら喜んでお供させていただきます」
私は王が用意してくださったものすべてを持って王宮を出た。
それが私の旅の始まりでもあり、滅亡への最期の旅でもあった。
その夜、私はごく親しい友人の一人に「有難い教えの説かれた経典を取りに行く」と言って別れの挨拶をしてから侍従を引き連れて西安を飛び出し、西へ
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