俗・西遊記/栗栖真理亜
 
、なおかつ、私の秘めたるもっとも弱き部分を王の広き心のうちにおさめていただけるなんて」
王は優しく私の頬を撫でると、「そのかわり」と口を挟まれた。
「朕にも聞いてほしい悩みがある。それは王宮第一の問題で、信用の置けるそちだからこと、相談できる事柄なのだ。」
そう前置きをされて、王は私の耳元でその秘密を囁いた。
「知っての通り、朕には堅物の皇后一人と16人の妃がおる。ところが最近どの女子とも満足させることができんのじゃ。おかげで、いまだに皇子誕生の知らせを聞かぬ有様。そこで、そちには今巷で噂されておる秘伝の書を天竺からこの都へ持って帰ってもらいたい。なんでも、天竺には秘伝伝授の書があるそうじ
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