俗・西遊記/栗栖真理亜
 
烏斯蔵国に入ってからであった。


とうとう我々一行は天竺に辿り着いた。
今まで長い道のりだった。
旅の途中で色々なことが起こったがそれでも挫けず何とか切り抜けてきた。
後はこの天竺で王がご所望する秘伝伝授の書を探すのみ。
孫悟空ら妖怪にはそれを「有難い教えの説かれた経典」だといい含めてあるので、奴らもすっかりそうだと信じ込んでしまっているようだった。
実はどんな内容のものであるのか話していない以上、何とか奴らに悟られずに例の書物を持ち出す方法を考えなくてはなるまい。
(さて、どうするか・・・)
私が考え込んでいると、悟空が不思議そうな顔をして私の顔を覗き込んだ。
(どうした
[次のページ]
戻る   Point(1)