俗・西遊記/栗栖真理亜
 
行ってしまった。
連れ攫われる時、地面には岩にはさまれてうめき声を上げるものやら、見るも無残に潰されてしまって形すら残されていないものやらが目に映ったが、私は念仏を唱えて眼を瞑った。
ネグラヘ着いてから、ヤツは私を介抱し出した。
ベッドに寝かしつかれた私は思わず身を固くしてしまったのだが、この猿の妖怪は何食わぬ顔で、傷口に薬草の露を練りこみ、包帯を巻いていった。
身の危険を感じていた私もやつが作業を終えてその場を去った後にやっと一息つくことが出来た。
どうやら、あの孫悟空という妖怪は私を獲って喰おうという気はさらさらないようだ。
ヤツの眼の色が変わったときはさすがに危なかったが、これで
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