俗・西遊記/栗栖真理亜
 
来のお導きだと思って、この妖怪の云うことを聞くしかなかった。
私は意を決して経を唱え始めた。
するとどうしたことだろう。
見る見るうちに岩が膨らんだかと思うと終いにはバ〜〜〜ン!!と石の固まりとなってはじけ飛んでしまったのだ。
我々は余りもの迫力に押されて、地面に平伏すしかなかった。
しばらく経ってからおそるおそる片目を上げ、少しずつ体を起こすと、私の顔のまん前に妖怪の顔が突然ニョッキリ現れた。
(ヒッ!!)
恐怖の余り、口を付いて出そうになった叫び声は喉元に押し戻されてしまった。
しかし、そんな事お構いなしに毛深く醜い猿顔はなおも私の顔を不思議そうに眺めている。
「こんなに綺麗
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