俗・西遊記/栗栖真理亜
 
数珠を片手に合掌をしていると、今度は猪八戒が腹を抱えて座り込んでしまった。
「腹減った。お師匠様、ここいらで何か食べませんか?」
それもそうだ。
ここ2・3日は呑まず食わずで、草の汁すら吸っていないのだから、腹が減るのは当たり前である。

私の故郷、西安に帰って来ると、すっかり都の情勢は一変してしまっていた。
すでに王は崩御なされていて、代わりに王の甥に当たるお方が王位に就いていらした。
私はひっそり街外れの小さな庵に閉じ籠り、密かにお前を産んだのだよ。
それから、誰にも知られずにお前を今まで育てて来た。
え?お前が誰の子か、だって?
それは判らない。
何しろ、私は今まで幾人
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