見えない未来を信じて/岡部淳太郎
 
たことも出来ず、ただ詩を書くことで日々を過ごしてきたのだ。このような病気になってあらためて自らの人生を振り返るた、なんと無様な人生であることかと、我ながら呆れ返る他ない。このような僕であるから、当然のことながら、病気が判明した時は絶望した。五十七歳のいまに至るまで良いこともなく漫然と過ごして時間を無駄にしてきたことへの報いとも思えた。大袈裟に言うならば、地獄に叩き落とされたような気分であった。これまで大して良いこともなかった自分に、神はなんて仕打ちをしてくれたんだとも思えた。
 しかしながら、一方で僕は最初に入院した病院で僕を担当してくれたとある女性職員に恋をしてしまった。彼女の笑顔だけが、地獄
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