IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
、何ものをも指示しないが故に、最も多くの可能性にとんだ記号となることができる。」とある。「何ものをも指示しない」といったことはないと思うのだが、そのことについては、後で述べる。
ところで、詩はもちろんのこと、俳句や短歌においてもまた、余白といったものが、その文字の書かれていない空白の部分が、いかに重要なものであるのかは、作者だけではなく、読み手の方もよく知っていることであると思われるのであるが、作品によっては、文字によって余白が書かれているような印象を与えるものもある。この沈黙ともいうべき空白は、読み手の記憶に大いに作用するのである。プルーストの「晦渋性(暗闇)によって光を作り、沈黙によっ
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