IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
」(『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』科学論、杉浦明平訳)「光はついに影によって解釈されねばならない」(稲垣足穂『宝石を見詰める女』)。「光と色と影とがたくみに配分されるとはじめて、それまで隠されていた見事な様相が目に見える世界に顕われ、そこで新たな開眼にいたるものである」(ノヴァーリス『青い花』第一部・第二章、青山隆夫訳)。

 意味の明瞭なものには、あまり目を見開かされることはない。強い光のもとで、目を見開くことがほとんどないように。もちろん、意味の明瞭なもののなかにも、見るべき作品はあるのだが、ほとんどのものが通俗的で、その主題も、すでに知っている作品のなかで取り扱われているものばかりで
[次のページ]
戻る   Point(10)