IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
りである。結局のところ、わたしたちは、たとえ難解な作品であっても、それがすぐれたものであれば、たちまち目を凝らして見るものであって、たとえそれが言わんとしているところの意味が明瞭なものであっても、凡作であれば、ちらとも目を向けようともしないものなのである。
それゆえ、作者といったものはみな、「凡庸なものは一切容赦しない」(ブロッホ『ウェルギリウスの死』第?部、川村二郎訳)覚悟で、作品の制作にあたらなければならないのである。そして、それだけが、作者というものに課せられた、唯一、ただ一つの義務なのである。
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