IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
やりとした薄明かりであったればこそなのである。なぜなら、うすぼんやりとした薄明かりでなければ、わたしたちが目を凝らすことなどないはずだからである。

「闇がなかったら、光は半分も明るく見えるだろうか」(ジャック・ウォマック『ヒーザーン』9、黒丸 尚訳)。「光と闇は宿敵ではなくて、/いったいの伴侶だ。」(ディラン・トマス『骨付き肉』松田幸雄訳)「白にはかならず黒がつく。」(フリッツ・ライバー『冬の蠅』大谷圭二訳)「光を見るにはなんらかの闇がなくてはならない。」(ソーニャ・ドーマン『ぼくがミス・ダウであったとき』大谷圭二訳)「いかなる物体も明暗なくしては把(は)握(あく)されない。」(
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