IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
はじめて存在できるものである。余白とは、闇である。余白のなかには、魂がうようよ蠢いているのである。生きているものの魂も、死んだものの魂も、余白のなかに蠢き潜んでいるのである。薄明のうすぼんやりとした明かりのなかで、ただそれらが存在していることだけが感じられるのである。しかし、目を凝らしさえすれば、夥しい数の魂たちが、その姿をくっきりと現わすのである。「何ものをも指示しない」わけではない。それどころか、はっきりと指し示すのである。わたしたちが目を凝らしさえすれば。それというのも、薄明があったればこそのことなのである。たとえ、それがうすぼんやりとした薄明かりであっても。というよりも、それがうすぼんやり
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