IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
、読み手によっては刺激的なものになり得るのである。凡作であっても、俳句や短歌がある特別な印象を与えるのは、余白とリズムによるところが大きい。詩においても、余白の視覚的な効果をねらってつくられたものもあるが、一瞥すれば、それが凡作かどうかは、すぐにわかる。凡作においては、余白は、単なる空白であって、何もないのである。何も詰まっていないのである。沈黙でさえ、そこには存在していないのである。

 ブロッホの『ウェルギリウスの死』の第?部に、「詩は薄明から生まれる」(川村二郎訳)とある。わたしには、「詩は薄明そのもの」のように思われる。薄明は、暗闇から生まれるものである。薄明は、暗闇があってこそ、はじ
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