夢のあと/栗栖真理亜
 
の劇団員として積極的に動き、何度も大学を留年し、ゼミ担当の教授から「君は俳優には向いてないよ」という言葉も無視して内定していた就職先さえ蹴り、とうとうそとばこまちの座長に上り詰めた。座長を務める傍ら、自ら、演出や脚本も手掛けるようになっていた。
しかし、学生の身分で、しかも芝居だけで食っていける訳がなく、タツミさんの口利きで、大学農学部の地下室で火災報知器の番をするバイトを始めた。それは、ずっと一人で日長一日、火災報知器がならないかどうか番をするというもので、報知器が鳴ると飛んでいって、本当に火事かどうかチェックする役目だった。とはいえ、そんなに頻繁に鳴る訳ではなく、鳴ったとしても器械の隙間に虫
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