夢のあと/栗栖真理亜
ちといえば、京都府内随一の国公立大学の学内にあるかなり名の知れた劇団である。確か、前身の演劇研究会のメンバーがすべて脱退して、一・二回生だけで再興したと聞いている。そしてそれを指揮したのも、この目の前にいる男だという事も。そんな男が一体自分に何の用なのだろうか。
「ぜひ君に来てもらって君の意見が聞きたいんだ」
そして、畳み掛けるように声を潜めて、耳元に囁いた。
「僕んとこの劇団もまだ出来立てホヤホヤで赤ん坊みたいなものだから、君の力を貸して欲しいんだ。ダメかい?」
そう言われると引き下がれない。
「あ、いや、ダメって訳じゃないんですけど…」
「じゃあ、僕達の芝居、観に来てくれるんだね?
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