祭りのあと/栗栖真理亜
 
なかった。
まるで女の子のように顔が火照り、あの筋肉質の太い腕で抱き抱えられ、広い頑丈な胸板で護られたのかと思うと、何故だかジンと股間が痺れた。
僕は隣に座る母に悟られやしないかとヒヤヒヤしながら横目で見ていたが、母は俯いたまま黙りこくっている僕が緊張していると思ったのか、特に何か気付いているという訳ではなかった。
そんな僕を消防団の彼は、母と話しながら時折母が目を離した隙にジッと見つめていた。
彼は知っていたのだ。僕の真意を。
どうして僕がこうして恥ずかしく体をモジモジしていたかを。
「坊っちゃん」
彼は語りかけ、僕の肩に腕を置いた。
ビクッと僕は反射的に震えて彼を見てまた頭を垂
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