桜花の舞/栗栖真理亜
 
て私も桜の一部となり、取り込んだ桜はぐんぐんと大きく成長し、
この界隈一体を覆い尽くしてしまうのではないだろうかとも。
だと・・・したら、あの女性も桜の一部となって今も尚生き続けているのだろうか?
私はとある有名な小説の一説を口ずさみながら桜を見上げる。
   ―桜の下には屍体が埋まっている。―
おそらくこの桜も人間を養分として根を張り、成長したものだろう。
桜の美しさは人の生贄の証なのだ。
いや、“生贄”よりも“献身”だろうか。自ら身を投げ出し桜の一部となる。
女は何を想って自らを桜に捧げたのだろう。
この桜は彼女にとって何を為すべき所だったのだろうか。

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