桜花の舞/栗栖真理亜
彼女の悲しみや苦しみといったものをすべて吸い取ってくれていたのだろうか?
だとしたら・・・。
私は一歩踏み出し桜に近づいていく。
私のこの憂いも消し去ってくれるだろうか。
悲しみも苦しみもすべて・・・。
私は手探りで桜の幹を探り当てると、額を当て、目を閉じた。
何時までそうしていただろう。
ふと、目を覚ますと、枝が揺れ、桜の花びらがさわさわと鳴った。
まだ私を受け入れる気はないらしい。
私はうっすらと笑みを浮かべると、フラフラと覚束無い足取りで当てのない道をまた歩き出した。
了
戻る 編 削 Point(3)