ATOM HEART MOTHER。/田中宏輔
もって見事である。しかも、呉氏が、原文の二行を七行に改めて翻訳されたので、その空間の拡がりがより感じとれるものとなっている。しかし、何よりも、繰り返される言葉自体が耳に心地よく、その繰り返す言葉が、繰り返される人間の生の営みというものを喚起させ、その音調的な美しさと、その情景の美しさのなかに、読み手を瞬時に包み込んでしまうのである。はじめて目にしたときの感激は、いまでもいっこうに薄れてはいない。そのような詩は稀である。ここには永遠があるのだ。しかも、それは、呼吸のように繰り返される、運動性を持った永遠なのである。まるで、ポオが『ユリイカ』のなかに書いていた「神の心臓の鼓動」(牧野信一・小川和夫訳)
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