ATOM HEART MOTHER。/田中宏輔
 
ディミオンの覚醒』第一部・10、酒井昭伸訳)といった言葉も思い起こされる。

 その形式が、もたらすのであろう。俳句も短歌も、まことに暗示性に富んだ文学形式である。しかし、一般的には、俳句作品の方が、短歌作品よりも情景を思い浮かべやすいものが多く、短歌作品の方が、俳句作品よりも作り手自身の情感を読みとりやすいものが多いと思われる。
 作り手自身の情感がよく伝わる、音調的にも美しい歌を、古今と新古今の歌人の作品のなかから、いくつか見てみよう。

ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ                     (紀 友則)

筑波嶺(つくば ね)の峰より
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