ATOM HEART MOTHER。/田中宏輔
る音楽に似ているような気がする。韻律のこのような高度なテクニックには、感心するほかない。人間の耳は、このような音にも喜びを感じるものなのである。
つぎの詩は、「ユリイカ」一九九一年一月号に掲載されたものである。
水面に浮かぶ果実のように
いくら きみをひきよせようとしても
きみは 水面に浮かぶ果実のように
ぼくのほうには ちっとも戻ってこなかった
むしろ かたをすかして 遠く
さらに遠くへと きみは はなれていった
もいだのは ぼく
水面になげつけたのも ぼくだけれど
この詩は、大岡 信氏によって「ユリイカの新人」に選ばれたときのものであるが
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