ATOM HEART MOTHER。/田中宏輔
ガラスのテーブルの上に置いたその缶コーラを、わたしも見たのだ。なぜなら、彼らが出会ったそのポルノ映画館は、わたしがノブユキとはじめて出会ったゲイサウナと同じ場所だったからであり、彼らが入ったラブホテルの部屋は、ゲイディスコで声をかけられた夜について行ったフトシの部屋と同じ部屋だったからであり、彼らが浴びたシャワーは、わたしがタカヒロとふざけてかけ合った琵琶湖の水と同じ水だったからであり、彼が目にした青年の背中の入れ墨は、わたしがエイジの背中に指で書いた薔薇という文字と同じものだったからであり、その青年がガラスのテーブルの上に置いた缶コーラの側面のラベルは、わたしがヤスヒロの手首につけた革ベルトの痕
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