ATOM HEART MOTHER。/田中宏輔
さしの
缶コーラ。
これは、わたしの体験ではない。わたしの現実ではない。ゲイの友人に、東京での思い出を、ルーズリーフに書き出してもらって、その「部分部分を切り貼りして」(デニス・ダンヴァーズ『エンド・オブ・デイズ』上・7、川副智子訳)つくったコラージュ作品である。しかし、「個人は、自分の人生体験にもとづくイメージや象徴でものを考えるのであり、二人の個人が共通の人生経験をもっていなければ、ふたりが分かちあうすべては混乱となる」(ウィリアム・テン『脱走兵』中村保男訳)。わたしも似た経験をしているので、友人の体験を、自分の体験に照らし合わせて感じとることができたのであろう。そしてまた、出来
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