ATOM HEART MOTHER。/田中宏輔
 
出来上がったばかりのこの作品に目を通していると、「急にそれらの言葉がまったく新しい意味を帯びた」(ジェイムズ・P・ホーガン『仮想空間計画』34、大島 豊訳)ような気がしたのである。「マールボロ。」の言葉となってはじめて、ようやく、それらの言葉が、真の意味を獲得したのではないか、とまで思わせられたのである。そうして、この作品は、いまでは、わたし自身の経験となっているのである。

 それというのも、彼らが浴びたシャワーの湯しぶきのきらめきが、わたしのなかに飛び込んできたからである。わたしのなかにある、さまざまな思い出のなかに。なかでもとりわけ、わたしのなかにある、ノブユキとの思い出のなかに。わたし
[次のページ]
戻る   Point(13)