ATOM HEART MOTHER。/田中宏輔
半分にすぎず、あとの半分が表現なのだ。」(エマソン『詩人』酒本雅之訳)。しかし、それにしても、なんと玲瓏華美な歌たちであろうか。すさまじいレトリックの塊たちである。彼らの苦悩が、このような音楽となり、意味となったのである。現代歌人たちは、ここまで到達したのである。ここまで追いつめられているのである。
これまでのわたしの詩作の歴史を、前期と後期の二つに大別すると、たとえば、前期には、「高野川」や「夏の思い出」や「水面に浮かぶ果実のように」のように、思い出や書きたいことがまずあって、それを言葉に紡いでいくという手法でなされたものが多く、後期には、これから紹介する、「みんな、きみのことが好きだっ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(13)