首曳きの唄/栗栖真理亜
に慣れっこになってしまっている僕は、黙って自分の席について法杖をついた。
窓際に目を向けると木々の緑が漣のように風で揺れている。
ザザッ・・・!
瞬間、激しい眩暈を感じて、思わず額を右手で抑えた。
「?」
ほんの一瞬の事でなにがなにやら分からない。
ただ過ぎ去った後の不快感だけが身体の節々に残った。
「!」
ガタッ。
僕はいすを引いて立ち上がると急いで周りを見渡した。
だが、僕の突然の行動でそれまで無関心を装っていたはずの連中数名だけが驚いたようにこちらへ振り向いただけで後は何も変わらなかった。
だんだんと胸焼けのような気持ちの悪い感触が僕を襲った。
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