首曳きの唄/栗栖真理亜
 
女はどんなことを喋るんだろう?)
僕はそればかりが気になって、さっきから同じ想いが頭の中で堂々巡りをしていた。
(きっと、僕のもとへと慌てて走りよってきた彼女が顔を赤らめ恥じらいながら、僕を見つめ、「遅れてしまってごめんなさい」とただ一言謝ったきり、黙り込んでしまうんだ。それから、僕が「別に遅れてしまっても、君なら全然構わないよ」と優しく赦しながら「反対に君みたいな素敵な子に呼んでもらってすごく嬉しいよ。今日は何か僕に特別な用があったのかな?」と切り出す。彼女は「ええ」と応えたきり、 ますます恥ずかしそうに下を向く。「恥ずかしがらずに言ってごらんよ。そのほうが楽になるから」と僕が促す。彼女
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