首曳きの唄/栗栖真理亜
僕は思わず後ろを振り返った。
しかし、後ろの座席シートには案の定誰もいない。
まるで冷や水を浴びせられたような恐怖が僕の身体全体を駆け巡った。
僕は車を急停車させると、後ろを振り向きざま、座席下に置いてある黒いバッグを恐る恐る両手で抱えるようにして持ち上げた。
どっしりと重い質量が僕の腕に伝わってくる。
僕はそれをひざの上に乗せると震える手でチャックを開けて中を覗き込んだ。
そこにはまぎれもなく、ヤツの首が大人しく収まっていた。
僕は深い溜め息をついた。
(今のは、一体・・・?)
なんだったのだろう?
とりあえず早くこの荷物をどこかへ処分しなければならな
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