首曳きの唄/栗栖真理亜
 
らない。
僕は思いっきりアクセルを踏み込んで車を急発進させた。
車は唸りを上げ、まるで狂った猛牛のように無人の道路を疾走する。
広い道路から右折して狭い路地に入り、その路地も抜けてしまうと、やがて灰色の校舎が見えてきた。
キ、キィィィィィィィィッッッッ!!!!!
僕は校門の前で車を急停車させると、慌ててエンジンを切り、黒いバッグを小脇に抱えるようにして降りた。
きょろきょろと辺りを窺うが、もちろん誰もそこにはいるはずがなかった。
そのまま門をくぐり、校舎の入り口へと向かう。
もう一度誰もいないことを確かめてから中へ入った。
電燈もなく真っ暗な校舎の中はやはりシ〜
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