首曳きの唄/栗栖真理亜
 
だろうか?
いや、そんなはずはない。
あれだけ、頭の中で“獲らぬ狸の皮算用”をして、ひとりで舞い上がっていたのだから。
それなら何故来ないんだろう?
僕はひとり取り残されたように、もうすっかり日が暮れて真っ暗になった琵琶湖を眺めた。
砂浜から遠くへ望む地平線は星の瞬きと共にうっすらとその線を残しているのみだ。
水底までも映し出すように透き通った水面も昼間ならボートやヨットの余波の影響で波打ち際まで水が押し寄せては引いていくのに、今はシ〜ンと静まり返っている。
(本当にアイツはやって来ないんじゃないだろうか?)
僕はだんだん不安になってきた。
ヤツが来ないとなると
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