首曳きの唄/栗栖真理亜
今や構うどころではなくなっていた。
(一体どこから覗き見していたんだろう?女子は確か二人いたような気がするが、こいつの気配などまったくなかったはず・・・)
さらに僕が思案にふけっていると、ヤツのイライラした様な声が飛び交ってきた。
「おい!一体どうなんだよ?貸してくれるのか、貸してくれないのか、どっちなんだよ?あれだと5万どころか、億ぐらい入ってそうだもんな。だったら、山分けしようぜ。どうせ、お前が持ってても宝の持ち腐れだろうからな」
言いたい放題な事を勝手に言い放つと、ヤツはニヤニヤと欲に塗れた顔付きで僕の頭を撫でた。
どうやら、バッグの中身は大金だとヤツは勘違いしているらし
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