首曳きの唄/栗栖真理亜
ノ内のほうは、貸してもらえると信じているのか、なおも言い募る。
「あ、いや、今すぐって訳じゃないんだ。たった5万なんだけど、都合ついてからでいいし。なにしろ、おれさ〜〜、親の小遣い全部パチンコですっちゃってさ〜〜〜、大ピンチ☆すっからかんだよ。ははははは」
経済的には笑い事では済まされないはずなのに、頭に手をやり、「いや〜〜〜、参ったな」といったポーズで垣ノ内は快活に笑ってみせた。
「なあ、貸してくれるだろ?5万。なあ?」
彼はさらに僕のほうへにじり寄って来ると、僕の頬を掌でピタピタと叩いた。
「・・・あ、あの、僕もいまお金ないんで・・・」
僕はシラを切ろうと必死で嘘をつい
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