首曳きの唄/栗栖真理亜
は早退しなきゃ・・・!)
半ば朦朧とした意識の中で僕は呟く。
そのまま、しばらく回復するまでじっとその場でうずくまっていたが、気持ちも体調も治まるのを待って上体を徐々に起こす形でよろよろと立ち上がった。
僕は壁に寄りかかりながらまるでゾンビのようにふらふらとトイレの入り口目指して歩いて行く。
「うっ・・・ふう・・・ふう・・ふう・・・」
ちょっとした動作でも体が言うことを聞いてくれず、息が荒くなってしまう。
(もう少し・・・もう少しで!)
後一歩で出入口へと手が届きそうだ。
その時だった。
どこかで聞き覚えのある声が突然耳の鼓膜を刺すように届いてきたのは・・・
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