首曳きの唄/栗栖真理亜
を探っていた。
しかし、いくらポケットの中を探ってみても、指先に固いものは当たらない。
(おかしい)
僕は必死にかき回してみたが、やはり手は布地の間で空を切るだけで、
物体らしきものは見当たらなかった。
「どうしたの?」
僕が布団の中でゴゾゴソ動いていることに気付いたのか、先生が不審そうな顔で問いかけた。
「あ、いや」
僕も慌てて手を止めて、彼女の顔ににっこり笑いかけた。
「そうねえ、今日のところは近藤君も疲れているだろうからゆっくり休んで、明日警察行きましょう」
まるで、遠足かデートの打ち合わせをするように彼女はあっさりと取り決めをした。
「それでいい
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