首曳きの唄/栗栖真理亜
て、今度は僕の顔を真正面に捉えて言った。
「正直、嬉しかったわ。先生だけには正直に話してくれて」
僕はまっすぐな瞳に気圧されるような感じがして、グッとつばを飲み込んだ。
(やはり、先生に話したのはまずかったのではないか)
僕はそんな気がした。
もちろん、彼女は自首を勧めるだろう。
この展開では付き物である。
余りにも重くなった荷物を降ろすようについ彼女に口を滑らせてしまったが、
今までひた隠しにしてきたのだから、喋るべきではなかった。
僕は彼女の白く細い項を見つめた。
そうするとまたもや、無数の小さな黒い虫達が血液中を駆け巡るような快い悦びが湧き上がって来る
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